IT(イット)はどんな映画?自分に合う?
子ども達それぞれが抱えるトラウマと向き合い、「IT」に打ち勝つ物語。
友情・絆・感情にフォーカスされた、スタンド・バイ・ミーのホラー版と言われることが多い作品「IT (イット)“それ”が視えたら、終わり。」。
ホラー要素はそこまで強くなく、怖がりでも観られると思います。
ただ、凄惨な描写やピエロが苦手な方は避けた方がいいかもしれません。
スティーヴン・キングの長編小説を映像化した作品なので、演出や構造が変更され、カットされてしまった描写もありますが、核心には触れていますので映画も十分に楽しめます。
より詳しく理解を深めたい方には、原作もおすすめです。
基本情報
【映画】
| 配信 | U-NEXT(見放題配信中) Apple TV/iTunes(レンタル・購入) Amazon Video(レンタル・購入) Hulu(サブスク) |
| 構成 | chapter1:2017年 chapter2:2019年 |
| 監督 | アンディ・ムスキエティ |
| ジャンル | サイコロジカルホラー |
- キャスト
- ビル・デンブロウ / ジェイデン・リーバハー
- ジョージ・デンブロウ / ジャクソン・ロバート・スコット
- ベン・ハンスコム / ジェレミー・レイ・テイラー
- リッチィ・トージア / フィン・ウルフハード
- べバリー・マーシュ / ソフィア・リリス
- スタンリー・ユリス / ワイアレット・オレフ
- マイク・ハンロン / チョーズン・ジェイコブス
- エディ・カスプブラク / ジャック・ディラン・グレイザー
- IT(ペニーワイズ)/ ビル・スカルスガルド
【原作】
| 著者 | スティーヴン・キング |
| 発行年 | 1986年 |
★子ども達が自分のトラウマを乗り越える、感情ドラマが好きな方にはおすすめの一作です。
★完全なホラーを求める方、ピエロや凄惨な描写が苦手な人にはやや不向きかもしれません。

テレビミニシリーズは観ていないのですが、原作小説(スティーヴン・キング著)を読みました。
あらすじ
chapter1:子ども編
chapter2:大人編
chapter1
メイン州デリーに住む兄弟、ビル・デンブロウと弟とジョージ。
ジョージはビルに作ってもらった“沈まない紙の船”を持って雨の中、遊びに出かける。
水に流されていく船は、やがて雨水管に落ちてしまった。
ジョージが雨水管を覗き込むと、片手に風船、片手に船を持った「IT」がそこにいた。
ジョージが差し出された船を受け取ろうと手を伸ばした時、「IT」の顔が恐ろしく歪み、ジョージは雨水管に引きずり込まれてしまった。
chapter2
デリーではまた、子どもが犠牲になる事件が多発していた。
デリーに残っていたマイクが6人に電話をかけ、招集。
6人にはデリーでの記憶が全く残っていなかったが、マイクからの電話で27年前に交わした誓いを思い出す。
当時奇跡的に生き延びた子ども達が大人になり、「IT」を倒すために再び故郷へと戻ってきた。
IT(イット)の「魅力」
子ども達が「IT」に打ち勝つために団結し、トラウマを乗り越える。
“絆・友情”に深くフォーカスされた物語です。
“トラウマ”を乗り越える
子ども達が自身の「恐怖」と向き合い、子どもにしか姿が見えない“ペニーワイズ”と呼ばれている「IT」に飲み込まれないよう成長しなければならないのです。
6人のトラウマがchapter1で明かされますが、リッチィだけ濁されています。
しかし、大人になったchapter2で示唆されるリッチィの「恐怖」は、当時の時代背景との兼ね合いを考えると、非常に納得感のあるものでした。
リッチィが自分自身のトラウマを乗り越えることができた時、この物語は真の完結を迎えたのだと思います。
ホラーなだけではない“友情と固い絆”の物語
世間の感想は極端に分かれるようです。
完全なるホラー映画だと思って肩透かしをくらってしまった方もいる様子。
なぜなら本作は、「スタンド・バイ・ミー」のホラー版と言われています。
ホラー要素もありながら、青春群像劇の要素が非常に強いのです。
ペニーワイズとの対峙を通し、彼らは友情・絆を深めていきます。
信頼・団結することの大切さを学び、恐怖に飲み込まれそうだった彼らが、最後には対象を“ちっぽけな存在”だと信じ込む言葉の力をもって「IT」に挑むのです。
スタンド・バイ・ミーのホラー版と言われる理由は、ここにあると感じます。
徹底された作り込み
作中で子ども達が初めて“IT”と対峙するシーンは、「ぶっつけ本番」で撮影されました。
なんと、当日まで子ども達は「IT」(ビル・スカルスガルド)と会っていないのです。
「もうほぼ演技じゃなく、本気で怖がってたかも」と、ベンを演じたジェレミー・レイ・テイラーがインタビューで語っていますが、まさに「本物の恐怖」をスクリーンに映し出しました。
すごすぎませんか?
私であれば、本気で怖がり始めたらパニック状態に陥って、演技どころじゃないと思うんです。
そのメイキング映像も観たのですが、さすがプロです。
本気で怖がりながらも、次のセリフも演技も飛ばずに見事演じきっていました。
「IT」を演じるビル・スカルスガルドが、自身で工夫した恐怖に振り切った演技や、その他の細かい演出など、本作はかなり作り込まれています。
観始めると止まらない理由が、様々な場面に散りばめられています。
原作小説:映画では描ききれなかった物語
スティーヴン・キングの原作小説は文庫4冊。
我が家にあるのは、どうやって読んでも肩と首が疲れるハードカバーの大判2冊です。
映画を観終わってからITの小説を読みました。
【原作を知ると驚愕?映画と小説の「ここが違う」印象的な3選】
- ビルの見た目
映画:スレンダーなイケメン
小説:なんと、髪の毛が薄い。 - ベンの変貌(ダイエット)
映画:チャプター2でも体形ついて多少触れられましたが、なぜここまで変化したかは語られない
小説:「執念のダイエット」の経緯がしっかりと描かれる - 恐怖の構成
映画:子ども時代と大人時代とで分けられているため、観やすい
小説:両方を行ったり来たりで、過去のトラウマが現在を侵食していく感覚がより強烈
さらに、デリーの歴史についての細かい説明もあるので理解が深まる。
映画で語られなかった話が小説には全て詰まっております。
マイクの父が昔話をしてくれるのですが、なんと“ハロラン”が登場します。
同じ名前の別人なのかと思っていたのですが、軍隊の中でご飯を作るんです。
「シャイニング」と「ドクター・スリープ」でおなじみの、あのハロランで確定です。
そもそも“ディック・ハロラン”てフルネームで登場している。
昔話のちょっとだけの登場でしたが、個人的にハロランが好きなのでちょっと心が躍りました。
ラストも映画とは違い、ここまでに繋がる重要な描写となっております。
映画では映像にできない内容なので、結末を知りたい方はぜひ原作をチェックしてみてください。
IT(イット)の「テーマ」
子ども達の心理と関係性に焦点をあてられている映画。
宇宙の秩序に関わる異次元の存在として「IT」の存在論にまで広がる小説。
なので、映画と原作では扱うテーマの範囲が違うと思いますが、「友情・恐怖・記憶の喪失・トラウマの克服」などのテーマは両作とも共通しています。
映画:ITの「テーマ」
「恐怖を通した成長と絆」。
「IT」は子ども達の中に存在していて、その内面にある“恐怖”を可視化するのです。
デリーの大人たちは無関心で問題を見ません。
そんな歪んだ社会が子ども達を孤立させます。
1人で抱く恐怖は、人を弱くします。
しかし、恐怖を共有した時、それは絆を生む。
子ども達は恐怖を共有することで結束し、相互承認によって強さを得ました。
その「繋がり」が、恐怖に立ち向かう鍵になるのです。
原作:ITの「テーマ」
「社会構造と宇宙的恐怖」
①時間構造
子ども時代と大人時代が交互に描かれることで
- トラウマは消えない
- 過去は現在に侵入する
- 忘れることは“一時的な封印”である
というテーマが明示されます。
②デリー
原作ではデリーの町の歴史が詳細に描かれます。
そこからわかるのは、ペニーワイズは、町の“腐敗”そのものと結びついた存在であるということ。
③宇宙的恐怖
原作の「IT」はより抽象的で、“概念”に近い存在です。
それは理解不能で、人間の理性を超えた宇宙的恐怖として描かれます。
映画が心理学ホラーなら、
原作は存在論ホラーと言えるでしょう。
気になる点・デメリット
- 完結までの視聴時間が長い
chapter1で「2時間15分」、chapter2で「2時間49分」あり、計5時間以上あります。
※一気見するには気合が必要、腰を据えて観られる休日向けです。
- ジャンプスケアに偏り気味
完全なるホラーを期待すると物足りないかもしれません。
※お化け屋敷にすら入れない私のような究極のビビりであっても、ビックリはするけど「無理!」てなる怖さがないので、怖がりの方にはちょうどいいかも(?)しれません。
実際に観て感じた「本音」
「IT」のデザイン的に、ピエロ恐怖症だと半端なくキツイです。
私は幸いピエロは平気なので問題なく観ることができました。
心霊的な怖さは控えめですが、視覚的な衝撃が強い描写が苦手な方はご注意ください。
レベルは、時にSAWくらいの衝撃です。
スプラッタは平気でもホラーが無理な私でも、これくらいであれば映画館の大スクリーンで本作を観ても大丈夫だったと思います。
ビックリ演出にはちゃんとビクッとしましたが、笑えちゃうシーンも盛り込まれていてるので、いわゆる“ホラーホラーした”作風ではありません。
小ネタ情報
本作の恐怖の象徴である「IT」のメイク。
なんと、2時間半以上かかったそうです。
さらに、恐怖を煽る焦点があっていない外側に向いた“目”。
なんとこれ、CGなどは一切使われていません。
「IT」を演じたビル・スカルスガルド本人によるものなのです。
当初は監督もそんなことができると想定していなかったので、CGを使う予定だったそうです。
それをビル・スカルスガルドが一言「できますよ」と。
監督もさすがに驚いたようです。
本当に、すごすぎる。
それと本作には、原作著者スティーヴン・キングがカメオ出演しております。
chapter2でビル(デンブロウ)にシルヴァー(自転車)を売っていました。
向いてる?向いてない?:まとめ
★こんな人におすすめ!
- 絆・友情・成長物語が好き
- 映画:原作は挫折したけど、ストーリーを知りたい
- 原作:詳細を知りたい
- ピエロとスプラッタに耐性がある
★こんな人には向かないかも…
- 完全なホラーを求めている
- ピエロやスプラッタ描写が苦手
- 説明や背景を深く考えるのが面倒
〆る:絆が熱い物語
ホラーが苦手な私でも正面から観られるレベルです。
なのでピエロとスプラッタ描写が平気であれば、相当な怖がりでも楽しめる作品。
小説は読みだしたら止まらないし、映画は映画で面白い。
赤い風船を見るとどうしても「IT」を思い出すようになりました。
文章と映像で2度おいしい。
キングの作品はどれも面白いです。

