【この記事でわかること】
- 小花美穂ワールドの魅力と気になる点
- 各作品の重さと世界観
※重大なネタバレはしません。
小花美穂先生の作品は「リアルな感情」「明るいギャグと重いテーマの共存」を特徴とするものが多く、“少女漫画”の枠を超えた重厚なテーマと人間ドラマが魅力です。
今回紹介する3作も、“重さ”と“人間の危うさ”が際立つ、深い読後感を味わえる1冊完結作品。
- 『水の館』
“こどものおもちゃ”の作中で紗南ちゃんと直澄くんが主演した映画の全容が描かれています。 - 『POCHI』
ストレス女王とノーテンキ大王…そして後の“MIKE編”が収録されています。 - 『Deep Clear』
“こどものおもちゃ”דHoney Bitter”の特別番外編です。
すべて、“感情の重さ”が味わえる短編作品です。

“こどちゃ”を読んだら水の館、Deep Clearも読みたくなり、POCHIを読んだら続編も読みたくなる…小花ワールドの魅力はすごいです。
▶【関連記事】“水の館”の真子を演じ、“Deep Clear”で大人になった紗南ちゃんの子ども時代が読める!漫画「こどものおもちゃ」ネタバレなし感想は、こちら。
独特な世界観を楽しめる?合う人・合わない人
★こんな人に合うかも!
「水の館」
- ストーリーの全容を知りたい
- 恐怖と切なさを味わいたい
「POCHI」
- 純粋すぎる危うさに触れたい
- 衝撃的なストーリーが好き
「Deep Clear」
- 紗南ちゃんと羽山のその後が知りたい
- Honey Bitter・こどものおもちゃを読んだ
★こんな人には合わないかも…
「水の館」
- 心霊的な怖さが苦手
- しんどすぎる物語が苦手
「POCHI」
- 現実的なシリアスな物語が苦手
- 家庭問題に強い拒否感がある
「Deep Clear」
- 少女漫画に特殊能力を求めていない
- “こどものおもちゃ”キャラが「大人」になった姿を見たくない
水の館(初版発行 1999年)
『水の館』あらすじ
不慮の事故で両親を失い、身寄りがなくなってしまった鈴原浩人(スズハラ ヒロト)は、6年前に行方不明になった実の兄の存在を思い出す。
わずかな手がかりを得て辿り着いたその先に待ち受けていたのは、想像を絶する現実だった。
怖い?大人になって読み返したら印象が変わった話
短編でありながら濃くて重いサスペンス。
「こどものおもちゃ」を知らなくても楽しめる作品です。
こどちゃ本編にも断片的に『水の館』のカットがあるので、これを全部読めると知ったなら!読む一択でした。
怖いだけではない“感情”が詰まったドラマ
幽霊や抜けられない闇など、小花先生ならではの世界なので少女漫画にしてはやっぱりシリアス。
子どもの頃に読んだ時はちょっと…すんごい怖かった(特に真子が若干トラウマに…)。
これが“りぼん”作品じゃなかったらきっと、もっとドロドロに描かれていたと思う。
大人になってから読み返すと、ただ怖いだけの印象はなくなりました。
閉ざされた館で6年間過ごしてきた3人の過去が、断片的な説明でも3人の背景が十分に想像できる秀逸な描写が素晴らしい。
怖いだけではなく、最初から最後まで誰もかれもが可哀想な物語で、終盤にさしかかるととても切ない展開が待っています。
そしてラストは読者の想像を膨らませるようなオチ。
小花先生本人のコメントを含め、このラストが「救い」なのか「絶望」なのか…ぜひその目で確かめてみてほしいです。
失うことと赦すこと、人の弱さと優しさ、小花先生らしい繊細で深い物語でした。
こどものおもちゃを知っているからこその現象
こどものおもちゃ本編では、水の館は電波の通らない山奥で3ヵ月くらいかけて撮影されました。
このロケ中
- 紗南ちゃんと直澄くんのゴシップ記事が世間に出回る
- 直澄くんのファンにより紗南ちゃんが大変な目に遭う
など、様々な出来事がありました。
先にこどものおもちゃを読んでいたことで“浩人”と“真子”ではなく、“直澄くん”と“紗南ちゃん”として読んでしまった気がする。
本作がとても切なく哀しいストーリーだったことに間違いはないです。
でも「こどものおもちゃの中の映画」として読み、そもそもフィクションですが「フィクションの中のフィクション」のような現象が私の中で起きていました。
「水の館」ウラ話
こどものおもちゃでは、この「水の館」の撮影ウラ話を読むことができます。
水の館にもオマケ要素として、こどものおもちゃには掲載されていない撮影ウラ話が盛り込まれています。
2倍楽しめますね。
POCHI(初版発行 2003年)
- 1999年「水の館」に収録されているのは「POCHI」のみ
- 2003年「POCHI」に収録されているのは「POCHI」と、続編の「POCHI ~MIKE編~」
初めての方はまず「水の館」から、続編も一気に読みたい方は「POCHI」をチェックするのがおすすめです。
『POCHI』あらすじ
時系列順に「POCHI」→「MIKE編」であらすじを紹介します。
POCHI
ストレスチェックにより「ストレス女王」と呼ばれるようになった中学3年生の清香(サヤカ)。
清香は塾へ向かう途中、犬の散歩さながらに首輪とリードを付けられた男の子の散歩をする家族を見かける。
塾が終わった後に友達に誘われて行ったお店で、清香はさっき見かけた男の子・斗望(トモ)と出会う。
MIKE編
山奥で祖父と自給自足生活をしている、中学1年生の三宅美紅(ミヤケ ミク)。
学校で女子からの人気が高い先輩、3年生の有賀斗望(アルガ トモ)と川村哲(カワムラ テツ)に声をかけられる。
これを機によくつるむようになり、次第に美紅は斗望に惹かれ始める。
裏表のない“純粋”さが怖かった話
悪意のない純粋さが危うい、斗望との出会い。
一見コミカルな設定の裏に隠された、目を背けたくなるような現実が描かれています。
私は「水の館」に収録されている『POCHI』から読みました。
続編が収録された『POCHI』も発売されたことを知り、続編も読んだ次第です。
POCHI:ストレス女王とノーテンキ大王
全く逆の性質を持つ清香が斗望に惹かれるのはわかるのですが、斗望の純粋無垢すぎる心は裏表が全くないので時々怖い。
清香の重たい願いを聞いた斗望は、何度か本人の意思を確認したのちに願いを叶えようとしました。
しかし、苦しくなった清香が「助けて」と言ったら助ける。
斗望の行動に悪意はなく、むしろ清香の気持ちを尊重した結果の行動。
相手の言葉をそのまま受け取り行動する危うさがありますが、このまっすぐすぎる心が斗望の魅力なのでしょう。
正反対の2人でちょうどいい清香と斗望。
内容はシリアスですが、斗望の心に救われながら読みきれる作品でした。
MIKE編:ポチとミケ
短編の「POCHI」がキレイに終わったので、続編はなくてもよかったのではとも思ったのですが…
中学3年生になった斗望。
根は変わっていない、純粋男子です。
ミケこと美紅は、そんな斗望に惹かれるのです。
そこは清香と一緒ですが、ミケは清香とは違ったタイプ。
明るくノリのいい性格が、どこか斗望のまっすぐさと響き合っている気もする。
清香の「彼のピュアさに応えていける自信が揺らいできた」というのもちょっと納得できる。
清香は真面目すぎるので、いっぱいいっぱいになってしまうかもしれませんね。
“純粋すぎる人”と関わることの難しさを考えさせられます。
これはこれでよかったのかもと思えました。
衝撃ながらも心に響くストーリー
斗望は首輪とリードを付けられていた過去があった。
清香は「誰もやらないなら自分がやればいい」と、自分でも気づかないうち大きなストレスを抱えた。
ミケは両親に悩みと葛藤を抱いている。
POCHIもMIKE編も、キャラクター達は裏には重たい問題を抱えています。
今なら意味もわかるし切実に受け止めつつ、色々と考えさせられました。
他の作品もそうですが、重たいテーマを扱いながら胸に響くようなストーリーを作り上げる小花先生は本当にすごい人です。
Deep Clear(初版発行 2010年)
デビュー20周年記念“こどものおもちゃ”דHoney Bitter”特別番外編です。
「Honey Bitter」の主人公、人の心が読める特殊能力を持つ珠里と、「こどものおもちゃ」の主人公、女優の紗南ちゃんが共演する、素晴らしきコラボ!
とはいえ、単体で成立している作品なので両作を知らなくても十分に楽しめます。
『Deep Clear』あらすじ
“オフィス・S”、音川珠里(オトカワ シュリ)のもとに現れたのは、役作りのための取材を依頼に来た女優の倉田紗南(クラタ サナ)と、マネージャーの相模玲(サガミ レイ)。
珠里は対価として、女優のプロの演技術を学ばせてもらうということで交渉は成立。
さらに、珠里は相模から極秘で紗南の夫・羽山秋人(ハヤマ アキト)の“浮気調査”を依頼される。
大人になった紗南ちゃんだけかと思ったら、推しにも会えた話
『Deep Clear』が発売されたことを知った時、少々興奮気味に「大人になった紗南ちゃんに!会える!?読む!」といった経緯で、本屋へ走りました。
軽いノリで描き上げた作品だそうですが、ファンにはたまらないご褒美のような作品。
さらに、本作でしか読めない“直澄くん”のその後の描き下ろしも収録されているのです。
懐かしさの暴走
Honey Bitterも読みましたが、私の小花作品の初めてが「こどものおもちゃ」です。
だからなのか、珠里目線で展開される物語なのですが、どうしても紗南ちゃんを主体に見ちゃう。
紗南ちゃん強すぎますね。
紗南ちゃんの変わらないノリと明るさ、それとギャグは読んでいて懐かしさがあります。
紗南ちゃんと羽山の他、玲くん、お母さん、ほんの少しだけだったけど剛くんと亜矢ちゃん、風花も登場します。
大満足ですよね。
Deep Clearに込められたもうひとつの意味
人の心が読める珠里は、その人が纏う“気”を感じることができます。
タイトルの「Deep Clear」は、紗南ちゃんの“気”のイメージであるとともに「心の奥深くにある傷をクリアにする」という意味も含まれます。
読んで納得です。
玲くんから極秘で“羽山の浮気調査”も受ける珠里ですが、そこには過去の苦悩と葛藤する羽山の姿が描かれます。
「特殊能力×女優×過去の苦い記憶」
全てが上手く絡み合って展開していく物語です。
直澄くん
直澄くんは「こどものおもちゃ」に登場する、とても“深い”キャラクターです。
そんな彼のその後が少し、意外(?)な結果とともに描かれています。
こどものおもちゃ本編ではずっと報われなかった直澄くんですが、本作で描かれた彼の「選択」と「今」には強い納得感があるので、私個人は満足でした。
こどちゃを知らないと楽しめない?紙の本は希少?気になる点
- “こどものおもちゃ”と“Honey Bitter”を知っているかどうかで没入感が変わるかも
特にDeep Clearは知っているかどうかで楽しめる度合いが変わると思います。
※「水の館」は“こどものおもちゃ”を知らなくても、単体で物語が完成しているので楽しめます。
「Deep Clear」も両作を知らなくても楽しめると思いますが、知っているとより深く背景を理解できます。
- 紙の本の入手ハードルが高い
書店やネットストアでの「紙の単行本」を見つけるのは現在では少し難しいかもしれません。
※紙の単行本を読みたい場合には、古本屋で探す必要があります。
今すぐ読みたい場合は、電子書籍版を読むのも1つの方法です。
『水の館・POCHI・Deep Clear』まとめ
個人的にはやっぱり、コラボではありますが、こどちゃの続編でもある『Deep Clear』が1番好きです。
『POCHI』は言わずもがな、『水の館』も「こどものおもちゃ」本編を知らなくても単体で楽しめる作品です。
小花ワールド特有の「内面にある重さ」を味わえる名作と呼べる短編作品でした。



