水の館・POCHI・Deep Clearはどんな漫画?自分に合う?
- 「水の館」
“こどものおもちゃ”の作中で紗南ちゃんと直澄くんが主演した映画。 - 「POCHI」
ストレス女王とノーテンキ大王…そして後の“MIKE編” - 「Deep Clear」
“こどものおもちゃ”דHoney Bitter”特別番外編。
どれも“少女漫画”の枠を超えた重厚なテーマが突き刺さります。
さくっと読めるけど、どれも深く心にくる物語。
連載漫画を追いかける時間はないけれど、映画を一本観たような深い読後感を味わえる1冊完結作品です。
| 作品 | 雰囲気 | 重たさ(5段階) | 自分に合う? |
|---|---|---|---|
| 水の館 | 恐怖・切ない | ★★★★★ | 映画の全容を知りたい 重く切ない物語を読みたい |
| POCHI | 社会派・危うさ | ★★★★☆ | 独特な倫理観や現実味のある衝撃に触れたい |
| Deep Clear | 懐かしさ・再生 | ★★★☆☆ | こどちゃ・Honey Bitterファン |
小花ワールドの「魅力」
【感情の密度が濃い】
無駄な説明や遠回りが少ないので、早い段階で感情の中心に触れる構成となっています。
【リアリティがある“矛盾”】
「強がるけど寂しい」などの感情の二重構造により、リアリティが生まれ「共感」できる。
【“心の奥”を語るセリフ】
取り繕った「かっこいい言葉」ではなく、幼さや真実味がある「本当は言えない本音」に近いからこそ刺さる。
【テーマが普遍的】
家族・恋愛・友情・自己肯定といった、誰もが通るテーマを扱う。
社会派ストーリーが真摯に描かれることで、心に重くのしかかる。

“こどちゃ”を読んだら水の館やDeep Clearも読みたくなり、POCHIを読んだら続編も読みたくなる…小花ワールドの魅力はすごいです。
【“Deep Clear”に登場する、紗南ちゃんの子ども時代が気になる方はこちらもご覧ください。】
▶「こどものおもちゃ」ネタバレなし感想は、こちら。
水の館(初版発行 1999年)
| 作者 | 小花美穂 |
| ジャンル | 少女漫画・サスペンス・恋愛 |
| 連載 | りぼん |
| 単行本 | 1巻(“POCHI”同時収録) |
あらすじ
“良くも悪くも目立つ”ことからクラス内で標的にされた鈴原浩人(スズハラ ヒロト)。
中学進学を機に見た目を地味にして、目立たずに日々をやり過ごす道を選んだ。
そんなある日、浩人の両親が交通事故で他界。
身寄りがなくなってしまった浩人だが、6年前に行方不明になった実の兄の存在を思い出す。
探偵を雇い、わずかな手がかりを得た浩人は1人目的地へ向かう。
辿り着いたその先に待ち受けていたのは、想像を絶する現実だった。
実際に読んで感じた「本音」
短編でありながら濃くて重い。
「こどものおもちゃ」を知らなくても楽しめる作品です。
静かな異色作
幽霊や抜けられない闇など、小花先生ならではの世界なので少女漫画にしてはやっぱりシリアス。
子どもの頃に読んだ時はちょっと怖かった。
これが“りぼん”作品じゃなかったらきっと、もっとドロドロに描かれていたと思う。
閉ざされた館で6年間過ごしてきた3人の過去、断片的な説明でも3人の背景が十分に想像できる秀逸な描写が素晴らしい。
怖いだけではなく、最初から最後まで誰もかれもが可哀想な物語で、終盤にさしかかるととても切ない展開が待っています。
そしてラストは読者の想像を膨らませるようなオチ。
小花先生本人のコメントを含め、このラストが「救い」なのか「絶望」なのか…ぜひその目で確かめてみてほしいです。
失うことと赦すこと、人の弱さと優しさ、小花先生らしい繊細で深い物語でした。
こどものおもちゃを知っているからこその現象
こどものおもちゃ本編では、水の館は電波の通らない山奥で3ヵ月くらいかけて撮影されました。
このロケ中に紗南ちゃんと直澄くんのゴシップ記事が世間に出回ったり、直澄くんのファンにより紗南ちゃんが怪我をさせられるなど、様々な出来事がありました。
先にこどものおもちゃを読んでいたことで“浩人”と“真子”ではなく、“直澄くん”と“紗南ちゃん”として読んでしまった気がする。
とても切なく哀しいストーリーだったことに間違いはないです。
でも「こどものおもちゃの中の映画」として読み、そもそもフィクションですが「フィクションの中のフィクション」のような現象が私の中で起きていました。
「水の館」ウラ話
こどものおもちゃでは、この「水の館」の撮影ウラ話を読むことができます。
水の館にもオマケ要素として、こどものおもちゃには掲載されていない撮影ウラ話が盛り込まれています。
2倍楽しめますね。
POCHI(初版発行 2003年)
| 作者 | 小花美穂 |
| ジャンル | 少女漫画・ラブコメ |
| 連載 | りぼん |
| 単行本 | 1巻 |
- 1999年「水の館」に収録されているのは「POCHI」のみ
- 2003年「POCHI」に収録されているのは「POCHI」と、続編「POCHI ~MIKE編~」
初めての方はまず「水の館」から、続編も一気に読みたい方は「POCHI」をチェックするのがおすすめです。
あらすじ
時系列順に「POCHI」→「MIKE編」であらすじを紹介します。
POCHI
ストレスチェックにより「ストレス女王」と呼ばれるようになった中学3年生の清香(サヤカ)。
清香は塾へ向かう途中、犬の散歩さながらに首輪とリードを付けられた男の子の散歩をする家族を見かける。
塾が終わった後に友達に誘われて行ったお店で、清香はさっき見かけた男の子・斗望(トモ)と出会う。
MIKE編
山奥で祖父と自給自足生活をしている、中学1年生の三宅美紅(ミヤケ ミク)。
学校で女子からの人気が高い先輩、3年生の有賀斗望(アルガ トモ)と川村哲(カワムラ テツ)に声をかけられる。
これを機によくつるむようになり、次第に美紅は斗望に惹かれ始める。
実際に読んで感じた「本音」
悪意のない純粋さが危うい、斗望との出会い。
一見コミカルな設定の裏に隠された、目を背けたくなるような現実が描かれています。
POCHI:ストレス女王とノーテンキ大王
全く逆の性質を持つ清香が斗望に惹かれるのはわかるのですが、斗望の純粋無垢すぎる心は裏表が全くないので時々怖い。
清香が「もう消えてしまいたい」と言ったとき、何度か本人の意思を確認したのちに斗望は清香を川に流してあげるのです。
しかし、川に流されるうちに苦しくなった清香が「助けて」と言ったら助ける。
斗望の行動に悪意はなく、むしろ清香の気持ちを尊重した結果の行動。
相手の言葉をそのまま受け取り行動する危うさがありますが、このまっすぐすぎる心が斗望の魅力なのでしょう。
正反対の2人でちょうどいい清香と斗望。
内容はシリアスですが、斗望の心に救われながら読みきれる作品でした。
MIKE編:ポチとミケ
短編の「POCHI」がキレイに終わったので、続編はなくてもよかったのではとも思ったのですが…
中学3年生になった斗望。
根は変わっていない、純粋すぎる危うい男子です。
ミケこと美紅は、そんな斗望に惹かれるのです。
そこは清香と一緒ですが、ミケは清香とは違ったタイプ。
明るくノリのいい性格が、どこか斗望のまっすぐさと響き合っている気もする。
清香の「彼のピュアさに応えていける自信が揺らいできた」というのもちょっと納得できる。
“純粋すぎる人”と関わることの難しさ、清香は真面目すぎるのでいっぱいいっぱいになってしまうかもしれませんね。
これはこれでよかったのかもと思えました。
衝撃ながらも響くストーリー
斗望は首輪とリードを付けられていた過去があった。
清香は「誰もやらないなら自分がやればいい」と、自分でも気づかないうちに円形脱毛症になるほどのストレスを抱えた。
ミケの両親は宗教にのめり込んでいる。
POCHIもMIKE編も、キャラクター達は裏には重たい問題を抱えています。
今なら意味もわかるし切実に受け止めつつ、色々と考えさせられました。
他の作品もそうですが、重たいテーマを扱いながら胸に響くようなストーリーを作り上げる小花先生は本当にすごい人です。
Deep Clear(初版発行 2010年)
| 作者 | 小花美穂 |
| ジャンル | 少女漫画・コメディ・SF |
| 連載 | Cookie |
| 単行本 | 1巻 |
デビュー20周年記念“こどものおもちゃ”דHoney Bitter”特別番外編。
「Honey Bitter」の主人公、人の心が読める特殊能力を持つ珠里
「こどものおもちゃ」の主人公、女優の紗南ちゃん
素晴らしきコラボです。
あらすじ
“オフィス・S”に入った1本の電話。
それから間もなくして音川珠里(オトカワ シュリ)のもとに現れたのは、女優の倉田紗南(クラタ サナ)とマネージャーの相模玲(サガミ レイ)。
連続ドラマで探偵を演じることになった紗南が、役作りのための取材をさせてほしいという。
珠里は対価として、女優のプロの演技術を学ばせてもらうということで交渉は成立。
さらに、珠里は相模から極秘でもう1つの依頼を受けることとなる。
それは紗南の夫・羽山秋人(ハヤマ アキト)の“浮気調査”だった。
実際に読んで感じた「本音」
“こどものおもちゃ”דHoney Bitter”両作を知らなくても楽しめると思いますが、知っているとより懐かしさがあります。
懐かしさと新鮮さ
このコラボ番外編は「Honey Bitter」の連載中に20周年を迎え、軽いノリで描き上げた作品だそうですが、ファンにはたまらないご褒美のような作品。
さらに、本作でしか読めない“直澄くん”のその後の描き下ろしも収録されているのです。
Honey Bitterも読みましたが、私の小花作品の初めてが「こどものおもちゃ」です。
だからなのか、珠里目線で展開される物語なのですが、どうしても紗南ちゃんを主体に見ちゃう。
紗南ちゃん強すぎますね。
紗南ちゃんの変わらないノリと明るさ、それとギャグは読んでいて懐かしさがあります。
紗南ちゃんと羽山の他、玲くん、お母さん、ほんの少しだけだったけど剛くんと亜矢ちゃん、風花も登場します。
大満足ですよね。
Deep Clearに込められたもうひとつの意味
人の心が読める珠里は、その人が纏う“気”を感じることができます。
タイトルの「Deep Clear」は、紗南ちゃんの“気”のイメージであるとともに「根深いトラウマをクリアにする」という意味も含まれます。
読んで納得です。
玲くんから極秘で“羽山の浮気調査”も受ける珠里ですが、そこには深いトラウマと葛藤する羽山の姿が描かれます。
特殊能力×女優×トラウマ
全てが上手く絡み合って展開していく物語です。
直澄くん
直澄くんは「こどものおもちゃ」に登場する、とても“深い”キャラクターです。
そんな彼のその後が少し、意外(?)な結果とともに描かれています。
こどものおもちゃ本編ではずっと報われなかった直澄くんですが、本作で描かれた彼の「選択」と「今」には強い納得感があるので、私個人は満足でした。
気になる点・デメリット
- “こどものおもちゃ”と“Honey Bitter”を知っているかどうかで没入感が変わるかも
特にDeep Clearは知っているかどうかで楽しめる度合いが変わると思います。
※「水の館」は“こどものおもちゃ”を知らなくても、単体で物語が完成しているので楽しめます。
「Deep Clear」も両作を知らなくても楽しめると思いますが、知っているとより深く背景を理解できます。
- 紙の本の入手ハードルが高い
書店やネットストアでの「紙の単行本」を見つけるのは現在では少し難しいかもしれません。
※紙の単行本を読みたい場合には、古本屋で探す必要があります。
今すぐ読みたい場合は、電子書籍版を読むのも1つの方法です。
合う?合わない?:まとめ
★こんな人に合うかも!
「水の館」
- ストーリーの全容を知りたい
- 恐怖と切なさを味わいたい
「POCHI」
- 純粋すぎる危うさに触れたい
- 衝撃的なストーリーが好き
「Deep Clear」
- 紗南ちゃんと羽山のその後が知りたい
- Honey Bitter・こどものおもちゃを読んだ
★こんな人には合わないかも…
「水の館」
- 心霊的な怖さが苦手
- しんどすぎる物語が苦手
「POCHI」
- 現実的なシリアスな物語が苦手
- 家庭問題に強い拒否感がある
「Deep Clear」
- 少女漫画に特殊能力を求めていない
- “こどものおもちゃ”キャラが「大人」になった姿を見たくない
〆る
やっぱり小花先生の作品は、どれも少女漫画枠を超えた衝撃性と、王道少女漫画ではみられない展開が魅力。
1度読めば小花ワールドにハマること間違いなし。
この記事に取り上げた作品はすべて「1冊」の読み切りです。
Deep Clearは、こどものおもちゃとHoney Bitterに触れたことがなくても楽しめるとは思いますが、コラボ作品なので、両方知っているとより没入感が増します。
POCHIは言わずもがな、水の館も、こどものおもちゃ本編を知らなくても単体で楽しめる作品です。
あわせて読みたい!
「こどものおもちゃのネタバレなし感想」



